小胞体にATPを輸送するトランスポーターの構造と分子機構の解明

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 ヒト、植物、酵母など真核生物の細胞内には、様々な細胞内小器官があります。その一つである小胞体は、タンパク質のフォールディング(折り畳み)・翻訳後修飾・品質管理、脂質やステロイドの合成、カルシウム貯蔵、薬物の解毒など、様々な生化学反応を担い、細胞の活動を支える上で欠かせない存在です。小胞体が正常に機能するためには「細胞のエネルギー通貨」であるATPを大量に必要としますが、小胞体自体はATPを作ることができません。どのようにして小胞体にATPが供給されるのかという問題は、生物学における大きな謎の一つでした。

 野村紀通 生命科学研究科准教授、岩田想 同教授、David Drew スウェーデン・ストックホルム大学(Stockholm University)教授らは、ヒト膜タンパク質SLC35B1がATPを細胞質から小胞体内部に輸送するトランスポーターであることを明らかにし、その立体構造と分子機構を、クライオ電子顕微鏡を用いて解明しました。

 本研究成果は、2025年5月21日に、国際学術誌「Nature」に掲載されました。

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小胞体にATPを輸送する膜タンパク質SLC35B1の立体構造(ER:小胞体、cytosol:細胞質)
書誌情報
【書誌情報】
Ashutosh Gulati, Do-Hwan Ahn, Albert Suades, Yurie Hult, Gernot Wolf, So Iwata, Giulio Superti-Furga, Norimichi Nomura, David Drew (2025). Stepwise ATP translocation into the endoplasmic reticulum by human SLC35B1. Nature.
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